業務マニュアルは、「誰が担当しても同じ品質で業務を再現できる状態」を作るための文書です。しかし、多くの企業で次のような悩みが発生しています。
- 業務マニュアルの作り方を知りたい
- 業務マニュアルを作りたいが、何から始めたらいいかわからない
- 業務マニュアルの基本的なテンプレートが欲しい
本記事では、業務マニュアルの作り方を具体的なテンプレートや実例を交えて詳しく解説します。現場で使える業務マニュアルを作りましょう。
業務マニュアルとは?
業務マニュアルとは、業務の再現性を高めるために背景・目的・手順・判断基準・例外対応を体系的にまとめた文書です。
目的はただ一つ、
「誰が担当しても同じ品質で業務を再現できるようにする」
これが業務マニュアルの本質です。
マニュアルは「読む」ものではなく、“使う”ためにあるツールです。
業務マニュアルがもたらす4つの効果
効果その1:属人化を防げる
業務マニュアルは、属人化の解消につながります。特定の人だけが業務内容や判断基準を知っている属人化の状態では、休職・退職のたびに業務が止まり、組織として大きなリスクを抱えることになります。
マニュアルによって手順・判断基準・例外対応が可視化されると、「この人がいないとできない」状況を根本から解消できます。業務が個人に依存しないため、チーム全体で安定して業務を回せる体制が整います。
属人化について詳しく知りたい方は、次の記事も参考にしてください。属人化の定義から解消方法まで詳しく解説しています。
>>属人化とは?原因・デメリット・解消方法を専門家がわかりやすく解説
効果その2:誰でも一定水準の成果を出せる
マニュアルがあることで、担当者ごとの“やり方の違い”が均質化され、どのスタッフでも一定水準以上の成果を再現できます。
経験や能力にばらつきがあるチームでも、手順・判断基準が統一されているため、品質のブレが軽減します。結果として、顧客対応や業務処理が安定し、組織としての信頼性の向上につながるでしょう。
効果その3:教育時間を短縮できる
マニュアルがあると、教える内容が標準化され、指導者による“教え方の差”が少なくなります。
新人はマニュアルを見ながら自主的に理解を進められ、指導者は補足や実践指導に集中できるため、教育のスピードと再現性が向上します。その結果、誰が教えても同じ質で育成でき、教育の負担や引き継ぎストレスを削減できるでしょう。
その分、指導者は本来取り組むべき業務や、付加価値の高い仕事に集中できるようになります。
効果その4:採用の幅が広がる
マニュアルが整っている組織ほど、未経験者でも短期間で戦力化できるため、採用対象の幅が広がります。
これまで「即戦力しか採用できない」と悩んでいた企業でも、「最低限のコミュニケーション能力があれば採用可能」という状態に変わります。結果として、学生・主婦(夫)・シニアなど多様な人材を受け入れやすくなり、人手不足の解消にもつながります。
業務マニュアルに付随する5つの資料
業務マニュアルは、単体で完結するものではありません。
実務で本当に再現性を高めるためには、複数の資料を組み合わせて “全体像” と “個別の手順” をセットで提供する必要があります。
まずは、代表的な5つの資料を表形式でまとめます。
| 資料名 | 役割 | 主な内容 |
| マニュアル | 全体像・背景を示す土台 | 目的/前提/判断基準/全体フロー |
| 手順書 | 誰でも再現できる作業手順 | ①→②→③の順番/画面/写真 |
| フロー図 | 業務の全体構造を視覚化 | 流れ/判断ポイント/例外分岐 |
| FAQ | 迷ったときに最短で答えにだどり着く | よくある質問/トラブル対応 |
| チェックリスト | 作業漏れ・理解漏れを防ぐ | 作業完了確認/理解度確認 |
ここからは、表で示した5つの資料について、より詳しく解説していきます。
資料その1:マニュアル(背景・ルール・全体像を示す資料)
マニュアルは、業務の背景・目的・前提条件・全体フローなどを体系的にまとめた“土台”となる資料です。
初めて業務に触れる人が全体像をつかむための役割が強く、詳細な操作よりも「なぜその業務を行うのか」「どんな基準で判断するのか」を明確にします。
組織としての統一基準を示すため、属人化を防ぐ上でも最初に整備すべき資料です。
資料その2:手順書(作業手順を具体的に示す資料)
手順書は、実際の作業を「①〜、②〜、③〜」と順番に示し、誰が行っても同じ結果を再現できるようにするための資料です。
マニュアルより細かく、操作画面や写真を使いながら手順を正確に伝えます。特にミスが許されない作業や、複雑な工程が含まれる業務で効果を発揮します。
マニュアルの“詳細版”として補完しながら使います。手順書は、マニュアルと一体になっているケースも多く、手順書も含めてマニュアルと呼ぶこともあります。
▼マニュアル・手順書の例

資料その3:フロー図(業務全体の流れを視覚化する資料)
フロー図は、業務の流れ・判断ポイント・例外処理の分岐を図で示した資料です。
文章では把握しづらい“全体のつながり”を直感的に理解でき、複数部署や複数担当者が関わる業務に特に有効です。
マニュアルと手順書を読む前にフロー図を見ることで、読み手は全体構造をつかみながら手順を理解しやすくなります。
また、フロー図を作る過程で、抜けや重複が浮き彫りになることも珍しくありません。
▼業務フロー図の例

資料その4:FAQ(よくある質問を最短で解決する資料)
FAQ(Q&A)は、現場で頻発する質問やトラブルへの回答をまとめた“困ったときに見る”資料です。また、システムの操作マニュアルにおいても、ユーザーからの問い合わせを減らすために、FAQを用意しておくのも有効です。
結論ファーストで答えにすぐたどり着ける構成が重要で、教育時の質問回数を削減します。マニュアルや手順書の補完として機能し、迷いやすい箇所の理解を深める役割を果たします。
更新しやすい形式で作成するのがポイントです。イレギュラーパターンなどを業務マニュアルに入り切らないものをFAQに入れると良いでしょう。
資料その4:チェックリスト(作業漏れを防ぐ資料)
チェックリストは、業務の「抜け・漏れ」を防ぎ、安心して作業できるようにするためのツールです。
用途は大きく 「作業の完了確認」 と 「理解度の確認」 の2種類があります。
(1)作業の完了を確認するチェックリスト
複数の作業がある場合に、漏れなく実施できているかを確認するためのものです。
項目を順番にチェックしていくことで、作業抜けを防ぎ、担当者が安心して業務を進められます。
(2)理解度を確認するチェックリスト
新人教育や兼任者のフォローで使う、“理解の抜け”を防ぐためのツールです。
項目ごとに 「覚える側」と「確認する側」 のチェック欄を設ける方法もあります。
- 覚える側は、わからない項目に無理にチェックをつけず、未習得部分を明確にできる
- 確認する側は、教えるべきポイントをピンポイントで把握できる
この仕組みによって 効率的な教育ができ、教える側の理解も深まる というメリットがあります。
▼業務チェックリストの例

MANUAL EXPERTでは案件に応じて組み合わせて提供しています。
マニュアル作成で使えるテクニック
テクニックその1:MECE(漏れなくダブりなく)
MECE は、情報を整理するときに「抜けも重複もない状態」を作る考え方です。
業務マニュアルでは特に 見出し設計の段階で必ず使います。
例えば…
【悪い例】受付業務/電話対応/清掃/例外対応/電話トラブル
→ 電話対応と電話トラブルが“重複”。
【良い例】通常業務/例外対応/トラブル対応
→ 粒度が揃い、漏れ・重複がなくなる。
【MECEを使うメリット】
- 情報の抜けが防げる
- 読む側が迷わない
- 手順を体系化しやすい
- そのまま「目次」や「章構成」にできる
「分類の粒度(レベル感)」を適切に揃えることで、“論理的に読みやすいマニュアル”を作ることが理想です。

テクニックその2:PREP法(結論 → 理由 → 具体例 → まとめ)
PREP 法は、
文章を「短く・わかりやすく・説得力のある構造」にする鉄板フレームワークです。
マニュアルでは以下のように活用します。
【PREPの例】
結論:次に、〇〇の設定を行います。
理由:この設定を行うことで、ミスを防げるからです。
具体例:具体的な手順は以下の通りです。①A…、②B…、③C…
まとめ:正しい設定でミスを減らしましょう。
PREPを使うだけで、
読みにくい文章 → 理解される文章
に変わります。
必ずしも形式にこだわる必要はありません。手順パートなどは、繰り返しになる場合は、PとEのみでも構いません。
テクニックその3:ワンセンテンスワンメッセージ
マニュアル作成でおさえておきたいルールが「一文に伝える内容は一つだけ」、ワンセンテンスワンメッセージです。
読みにくいマニュアルほど、1文に2〜3個の操作が入っていることがあります。
良くない例(1文に複数動作)
「画面を開いて右上のボタンを押して検索欄に入力します。」
良い例(1文1メッセージ)
① 画面を開きます。
② 右上の“検索”ボタンをクリックします。
③ キーワードを入力します。
【メリット】
- 解釈の違いを生みにくい
- 写真や図との対応が取りやすい
- アクションの完了が明確になる
1文1メッセージは、
「正しく伝わるマニュアル」を作る上で欠かせないテクニックです。
業務マニュアル作成の8ステップ
業務マニュアルは、次の8つのステップで作成すると良いでしょう。
- 目的を決める
- スケジュールを決める
- 業務の棚卸し(情報収集)
- 構成・見出しを作る(設計)
- ツールとフォーマットを決める
- 実際に書く(文章化)
- 内容をチェックする(品質確認)
- 運用・更新ルールを決める
それぞれのステップを詳しく解説します。
STEP1:目的を決める
マニュアル作成で重要なのは「目的の明確化」です。
目的が曖昧だと、どれだけ良い内容でも“使われないマニュアル”になります。
【目的の例】
- 新人が3日で業務を覚えられる状態を作る
- 属人化している受付業務を標準化する
- クレームが多い部分を統一し、ミスを減らす
- いつ事業継承のための準備をしておく
目的があると、書く内容の過不足がなくなり、読み手にとって使いやすいマニュアルになります。
STEP2:スケジュールを決める
マニュアルが後回しになる最大の理由は「締切がないこと」。
必ずスケジュールを設定します。
【決めるべき項目】
- 作成期日
- 初稿の提出
- 確認の期間
- 修正の期間
- 最終の目安
締切があるだけで完成までのスピードが上がります。マニュアルは確認や修正にも時間を要します。作成の期間だけでなく、確認や修正の時間も想定してスケジュールを組むようにしましょう。
確認は誰が確認するかも明確にすることも重要です。
STEP3:業務の棚卸し(情報収集)
マニュアル作成の70%はこの工程で決まります。現場の業務を細かく“見える化”します。
【洗い出す内容】
- 目的
- 実際の手順
- 例外対応
- 判断基準
- 暗黙知・コツ
- 想い(事業継承の場合には必須)
ヒアリング×現場観察の両方を行うのがポイントです。
STEP4:構成・見出しを作る(設計)
情報を並べるだけでは読まれません。マニュアルの質は“構成”で決まります。
【良い構成の流れ】
- 目的
- 全体フロー(図が理想)
- 手順
- 注意点
- 例外対応
- FAQ
- チェックリスト
見出しの粒度を揃え、MECE(モレなくダブりなく)を意識します。
STEP5:ツールとフォーマットを決める
マニュアルを何のツール(ソフト)を使って作成するかを決めます。
マニュアルに適しているツールとして、以下の4つを紹介します。
| ツール(ソフト) | 特徴 |
| Word | 使える人が多い。紙/PDFで配布したい場合。 |
| PowerPoint | 図の作成が容易。ビジュアル重視の場合。 |
| Googleドキュメント | シンプルな機能。共同編集・更新が多い場合。 |
| Excel/Googleスプレッドシート | 表の作成が容易。一覧管理の場合。 |
チームのITレベルや運用方法に合わせて選定します。
STEP6:実際に書く(文章化)
文章化は次の基本原則を守るだけで、読みやすいマニュアルになります。
【文章化のルール】
- 結論ファースト
- 1文1メッセージ
- 番号付きで手順を書く
- 動詞を明確にする(開く/入力する/確認する)
- 図・スクショを適切に使う
マニュアルは例外対応の扱い方が重要です。例外対応は独立した項目で記載することが良いケースもあります。
STEP7:内容をチェックする(品質確認)
文章を書き終えたら、必ず「チェック工程」を挟みます。
どれだけ丁寧に書いても、書きっぱなしでは誤字や表記ゆれ、手順の抜け漏れが生まれ、
“読まれない・使われないマニュアル”になってしまいます。
チェックは次の3つの観点で行うと、抜け漏れなく品質を担保できます。
(1) 文章・表記の品質(読みやすさの確認)
- 語尾が統一されているか(です・ます調/である調)
- 表記ゆれがないか(例:メール/Eメール/e-mail など)
- 1文1メッセージになっているか(長文になっていないか)
- 誤字脱字がないか
(2) 内容・手順の正確性(再現できるかの確認)
- 手順通りに作業を再現できる内容になっているか
- 番号やステップの順番が正しいか
- 画像・図と文章が一致しているか
- リンク先に誤りがないか
- 内容の重複がないか
- 説明が不足しているところはないか
- 初めて読む人が理解できるか(専門用語に補足説明があるか)
- 注意点・例外対応が適切に記載されているか
(3) 仕上がり・運用性(使いやすさの確認)
- 見出し・余白・レイアウトが整っているか
- 図表やスクリーンショットの配置が適切か
- 印刷やPDF化したときにレイアウトが崩れないか
- 今後の更新がしやすい構成になっているか
これらのチェックを行うことで、「誰が読んでも、同じ手順で正しく作業できるマニュアル」に仕上がります。
STEP7:運用・更新ルールを決める
マニュアルは「作って終わり」ではありません。
運用・更新の仕組みがあって初めて使われ続けます。
【最低限の仕組み】
- 月1回の更新チェック
- 改訂メモ欄の設置
- 更新担当者の明確化
- 教える人がマニュアルを活用
教える人がマニュアルを活用することによって、マニュアルと実務の違いに気づき、更新しやすくなります。チェックリストを活用し、教える人もマニュアルの理解を深めると良いでしょう。
すぐ使えるマニュアル構成テンプレート
マニュアルを作ろうとすると、「どんな順番で書けばいいのか?」「必要な項目は何か?」というところで手が止まるケースがよくあります。
そこで、どの業種にも共通して使えるテンプレートとして、全体の構成と手順パートのテンプレートを紹介します。この構成に沿うだけで、読みやすく・伝わりやすく・漏れのないマニュアルが作れるようになります。
【構成テンプレート】
- はじめに(目的/対象/前提)
- 用語説明
- 全体フロー(図解)
- 機能A
4-1.操作方法(1)
結論・目的→手順→補足・注意点・例外パターン
4-2.操作方法(2)
4-3.操作方法(3) - 機能B
- よくある質問(FAQ)
- チェックリスト
- まとめ
全体の構成のほか、手順パートのテンプレートを紹介します。あくまでテンプレートなので、必要に応じて、項目を調整しましょう。
【手順テンプレート】
- 結論・目的
- 手順
①~します。
②~します。
③~します。 - 補足・注意点・例外パターン
※必要に応じて図・写真・表を入れる
このテンプレートに沿えば、「どこに何を書くか」を迷う時間が減り、内容の抜け漏れも防げます。
マニュアルを作る時間がないという方は外注もおすすめ
「必要だとは思うけれど、作る時間がない」という場合は、業務マニュアルを外部の代行会社に依頼するのも一つの方法です。
外注のメリットは、専門家が整理するため “使われるマニュアル” が必ず完成することです。納期があることで後回しにならず、業務の棚卸しも短期間で一気に進みます。さらに、第三者がヒアリングすることで、社内では見えにくかった 属人化の原因やムダが可視化される といった効果もあります。
一方で、外注には一定の費用がかかり、業務量が多い場合はヒアリングに時間を要することもあります。外注にはプラス面と注意点の両方がありますので、より詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>業務マニュアル作成を外注するメリット・デメリット|代行会社の選び方を専門家が解説
まとめ:業務マニュアルで、組織の「再現性」を作る
業務の属人化は、個人の頑張りや経験だけでは解消できません。
解決の鍵は、“誰がやっても同じ成果が出る仕組み”を作ること。
その中心にあるのが 業務マニュアル です。
マニュアルが整うと、組織のあらゆる場面がスムーズになります。
- 手順の可視化でミスが減る
- 判断基準が統一される
- 教育・引き継ぎが効率化する
- 新人や未経験者でも戦力化しやすくなる
- 採用の幅が広がり、人材リスクも低減できる
マニュアルは “未来のトラブルを防ぎ、組織の力を底上げする資産” です。
もし、
「どこから手をつければいいかわからない」
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「プロの目線で整えてほしい」
という場合は、私たち MANUAL EXPERT が伴走しながら、現場で“使われ続ける”マニュアルを作成いたします。
業務マニュアル作成でお困りの方、MANUAL EXPERまでお気軽にお問い合わせ下さい。
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