
業務マニュアルは、誰でも一定の水準の仕事ができるようにするためのツールです。
しかし、業務マニュアル作成の重要性を理解しつつも
- 業務マニュアル作成がなかなか進まない
- 業務マニュアルを作っても使われない
という悩みをもつ経営者や責任者も多いでしょう。
本記事では、限られた時間とリソースの中でも、実用的なマニュアルを作成するコツと成功事例を交えて解説します。
使えるマニュアルを作成し、業務の標準化を実現しましょう。
マニュアル作成のメリット
マニュアルの目的は、業務の標準化です。業務の標準化をすることで、次の4つのメリットがあります。
- 誰でも一定水準の仕事ができるようになる
- 短い時間で同じように教育できる
- 指導者が本来の仕事に専念できる
- 採用の幅が広がる
それぞれのメリットを詳しく解説します。
メリットその1:誰でも一定水準の仕事ができるようになる
マニュアルの存在により、どの従業員も一定の業務水準を維持して仕事を行うことが可能になります。従業員の経験や能力の差によるアウトプットのばらつきが減少し、基本的な業務は誰もが遂行できるようになるでしょう。
マニュアルがない場合、経験豊富な従業員に依存する状況が生じ、新入社員の成長が阻害されることもあります。また、リーダーが部下に業務を委ねることに不安を感じ、すべて自分で行うという状況に陥りがちです。
業務の基準を示すマニュアルがあれば、どの従業員も一定レベル以上の成果を出すことが期待でき、リーダーも安心して仕事を任せることができます。
メリットその2:短い時間で同じように教育できる
マニュアルがあれば、教育にかかる時間を短縮し、全員が同じ基準でトレーニングを受けられます。一方で、マニュアルがない場合、新たな従業員が加わるごとに一から基本を教える必要があり、教育の一貫性が欠け、指導者による教育の質が不均一になりがちです。
マニュアルが整備されていることにより、指導者は教育の際に重要なポイントを強調し、細部にわたる指導はマニュアルに委ねられます。どの指導者が教えても一定の教育水準を維持し、効率的に従業員を育成できます。
メリットその3:指導者が本来の仕事に専念できる
マニュアルの存在は、新人教育を大幅に効率化し、指導者の教育負担を軽減します。マニュアルがない場合、基礎から詳細にわたる教育が必要となり、指導者は多くの時間を教育に割かなければならず、自身の本来の業務に専念できない場合もあるでしょう。
一方、マニュアルがあると、新入社員は自分でも学習でき、指導者は重要なポイントのみを補足する程度で済むため、教育時間が短縮されます。指導者は通常業務に早く戻ることができ、必要に応じて次の新人のトレーニングにも取り組めます。
メリットその4:採用の幅が広がる
マニュアルの整備は、採用対象を多様化させる大きなメリットをもたらします。特定の高度なスキルが不要な業務において、マニュアルがあれば、学生やシニアといった異なる年齢層でも、一定の水準に育成することが可能です。
労働市場が狭まる少子高齢化の社会においても、企業は幅広い人材を採用し、効果的に活用できます。定年退職後も働きたいと願うシニアの方にとって、簡潔で理解しやすいマニュアルは職場への再適応を支援し、働くことは生きがいとなり得ます。
企業は、マニュアルを用いて様々な背景をもつ人々を効率良く教育し、人手不足を解消しつつ社会全体の労働力を強化することが可能です。その結果、採用の幅を広げ、多様な人材が活躍できる環境を創出できるでしょう。
チェックリストや手順書との違いとは

マニュアル、チェックリスト、手順書はそれぞれ業務の効率化と品質保持に貢献する重要なツールですが、目的と役割には明確な違いがあります。3つのツールを適切に組み合わせて使用することで、業務の効率化と品質の維持が効果的に行われ、全体の業務運営がスムーズになります。それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。
マニュアルと手順書との違い
マニュアルと手順書は、どちらも業務の効率と正確性を向上させるために不可欠ですが、目的と内容には重要な違いがあります。以下の表は、マニュアルと手順書の主な違いを要約しています。
特性 | マニュアル | 手順書 |
目的 | 業務の全体理解と高品質な成果を目指す | 作業の安定的な実行を目的とする |
役割 | 業務全体の流れと背景を説明 | 具体的な作業手順を詳細に説明 |
取り扱う情報量 | 広範囲(業務全体の理解に必要な情報を含む) | 限定的(特定の作業に必要な情報のみを含む) |
重点 | 戦略的な業務遂行 | 具体的な作業指導 |
いずれかのツールを適切な場面で使用することで、業務の効率化と品質の向上を実現できます。
マニュアルとチェックリストとの違い
チェックリストは、マニュアルや手順書とは異なり、業務や作業の完了を確認するために使用されるツールです。簡単にチェックを入れられる項目で構成されており、業務上のミスを防ぐためや、作業工程が適切に完了しているかを確認する目的で利用されます。
チェックリストには具体的な作業手順は記されておらず、作業漏れやミスを最小限におさえるための最低限の品質保証として機能します。マニュアルが業務の品質の均一化を目的とするのに対し、チェックリストの役割は作業の最終確認や品質を保証することです。
マニュアルとの連携
マニュアル、手順書、チェックリストはそれぞれ異なる役割をもちつつも、お互いを補完し合うことでより実用的なツールとなります。
マニュアルに細かい情報を詰め込み過ぎると、読み手の負担になり、どこに何が書いてあるか、かえってわかりにくくなるでしょう。そこで、マニュアルに大まかな流れまでを記述し、詳細は手順書に誘導することで、マニュアルの文量をおさえられます。
また、チェックリストを用いることで、マニュアルに基づいた業務が正確に行われているかを確認できます。マニュアルを作って終わりではなく、実用的で使いやすいツールにすることで、作業効率と業務の質の向上につながるでしょう。
マニュアルの作り方
業務マニュアルは次の7つのステップで作成します。
- 目的を設定する
- スケジュールを決定する
- 盛り込む情報を収集・整理する
- 構成・見出しを作成する
- ITツール・フォーマットを選ぶ
- マニュアルを書き進めて仕上げる
- 運用・更新ルールを決めておく
それぞれの作り方を詳しく解説します。
作り方その1:目的を設定する
マニュアル作成の最初のステップは、目的を明確に設定することです。具体的に「何のために」マニュアルを作成し、「誰に」向けているのかを定める必要があります。マニュアルがどのような状況やシーンで使用されるかを特定しましょう。
目的が曖昧なマニュアルは徐々に使用されなくなる傾向があります。明確な目的をもって作成されたマニュアルは、適切にメンテナンスされ、長期間にわたって役立ちます。
作り方その2:スケジュールを決定する
作業の計画では、マニュアル完成までのスケジュール設定が重要です。スケジュールを明確にすることで、業務が後回しになることを防ぎ、効率的に進行できます。
マニュアル作成時には、情報の収集や整理、見出しの設定、内容の作成といった各段階で要する時間を細かく見積もります。利用者のフィードバックを取り入れながら内容をブラッシュアップし、完成度を高めるためには、予定に柔軟性をもたせることも大切です。
作り方その3:盛り込む情報を収集・整理する
マニュアル作成には、盛り込む情報の収集と整理が必要です。マニュアルに記載する業務内容、作業手順、注意点、問題点などを綿密に確認し、体系的にまとめます。情報は、直接的に業務を行っている者だけでなく、必要に応じて関連する部署や関係者から集めることも必要です。
情報が集まったら、業務の全体像を正確に把握し、マニュアルをより実用的で理解しやすくします。情報の整理には、業務の流れを視覚的に示すフローチャートやリストを用いると効果的です。
作り方その4:構成・見出しを作成する
マニュアル作成において、全体の構成と見出しを事前に設計することが重要です。全体の枠組みを決めずに作り始めると、作成中に手戻りが発生したり、一貫性がなく読みにくいマニュアルができあがったりする可能性があります。
構成を先に固めることで、作成作業がスムーズに進み、必要な情報が適切な順序で配置された使いやすいマニュアルが完成します。初期段階での構成決定は、作成プロセス中の手戻りを減少させ、時間とリソースの節約にもつながるでしょう。
作り方その5:ITツール・フォーマットを選ぶ
マニュアル作成において最適なITツールとフォーマットの選択は、使い勝手と機能性に影響します。
たとえば、Googleドキュメントやスプレッドシートは、リアルタイムでの共同編集やアクセスの容易さが特徴であり、遠隔地にいるチームメンバー間での情報共有に適しています。一方、MicrosoftのWord、Excel、PowerPointは、テンプレートと編集機能が充実し、比較的使い慣れている方も多いのが特長です。
手順が複雑または視覚的説明が必要な場合は、YouTubeなどを用いた動画マニュアルによって、操作手順を視覚的に理解しやすくする方法もあります
選択するツールやフォーマットは、目的、規模、対象者の技術的背景によって適切なツールを使い分けると良いでしょう。
作り方その6:マニュアルを書き進めて仕上げる
マニュアルの作り込みの段階では、次のポイントを意識しながら、明確かつ効果的なマニュアルを作り上げます。
- 文章は短くし、長文は避ける
- 初心者にも理解しやすい文章を心がける
- 専門用語の多用は避け、必要な場合は説明を加える
- 大事なところは色を変えるなど強調する
- 必要に応じて図表、写真、動画、箇条書きを活用して見やすくする
文書を整える過程で、作成した見出しと実際の内容に矛盾やブレがないかをチェックし、一貫性を確保することも大事です。大事なポイントを強調することで、ユーザーが直感的にマニュアルを利用し、必要な情報を迅速に把握できるようになります。
作り方その7:運用・更新ルールを決めておく
マニュアルを活用するためには、明確な運用と更新のルールを事前に設定することが重要です。
マニュアルは完成した後も、現場の変化や技術の進歩、作業内容の更新に応じて、継続的に見直しと改善を行う必要があります。メンテナンスを効率的に行うため、マニュアルの配布後には運用開始と同時に定期的なレビューのスケジュールを組み、更新が必要な場合は速やかに対応できる体制を整えましょう。
マニュアルの運用は、新規スタッフの教育だけでなく、経験豊富なスタッフの業務見直しにも役立ちます。運用ルールには、マニュアルに基づいた業務の実行をどのように促進し、支援するかのガイドラインを含めることが望ましいです。
マニュアル作成のコツ
実用的な業務マニュアルを作成するためのコツは次の5つです。
- 基本的なことを丁寧に説明する
- 画像(写真やスクリーンショットなど)をうまく活用する
- デザインよりも使いやすさを重視する
- 更新がある前提で作成する
- マニュアル作成を後回しにしない
それぞれのコツを詳しく解説します。
コツその1:基本的なことを丁寧に説明する
マニュアルを作成する際には、初めて読む方を想定して、基本的な事項を丁寧に説明することが重要です。業務に精通している方がマニュアルを作成する際、すでに知っていると思い込みがちな基本的な内容を省略することがあります。
たとえば、そもそも業務の目的は何なのか、どういうスタンスでお客様に接するのか、など企業の根幹となることもマニュアルの冒頭で伝えるチャンスです。
マニュアルは読者を育成するツールとしても機能します。作成時には読み手の知識レベルや経験を考慮し、新入社員や未経験者がスムーズに情報を吸収できるようにマニュアルを設計することが効果的です。
コツその2:画像(写真やスクリーンショットなど)をうまく活用する
マニュアル作成において、写真やスクリーンショットを使って視覚的にわかりやすく工夫することは重要です。文字でだらだら説明するよりも写真一枚あればイメージがつきやすいこともあります。
たとえば、操作手順を説明する際に、文章だけでなくスクリーンショットを用いて具体的な画面を示すことで、ユーザーが正確にどこを操作すれば良いのかを伝えます。また、「ここをクリック」といったアクションポイントに丸印や矢印を加えると、更に理解が容易になります。
作成には多少の手間がかかるものの、読み手が内容をすばやく理解し適用する時間を大幅に短縮できます。最終的には多くの従業員が効率良く業務を遂行できるようになり、企業全体の生産性向上につながるでしょう。
コツその3:デザインよりも使いやすさを重視する
マニュアル作成においては、見栄えの良さよりもユーザビリティー、つまり使いやすさを最優先に考えることが重要です。確かに、魅力的なデザインは大切ですが、過度にデザインにこだわることで作成時間が増えたり、逆に内容が読みにくくなったりすることもあります。
マニュアルは美しさで評価されるのではなく、どれだけ効果的に情報を伝え、実際に活用されるかで価値が決まります。デザインはあくまで内容を支えるためのものであり、わかりやすさと機能性を損なわない範囲でのシンプルかつ統一感のあるデザインを心がけるべきです。
コツその4:更新がある前提で作成する
マニュアル作成は、最初から完璧を目指すのではなく、業務の変化に応じて内容を更新できるようにしておきましょう。マニュアルが業務の実態にそぐわないものになることを防ぎ、常に現場のニーズに合った情報を拾って更新します。
更新をスムーズにするためには、更新担当者や更新スケジュールを明確に定め、必要な変更が迅速に行える体制を整えることが重要です。マニュアルの利用者からのフィードバックを積極的に取り入れ、実際の業務に即した内容に修正を加えていくことが求められます。
コツその5:マニュアル作成を後回しにしない
マニュアル作成は時間と労力を要するため、業務の片手間に進めることは避け、計画的に取り組む必要があります。大規模なマニュアルの場合、プロジェクトとしてチームで取り組むことが効果的です。
日常業務との兼ね合いでマニュアル作成が遅れがちな場合は、外注を検討するのも一つの解決策です。外部の専門家にマニュアル作成を依頼することで、専門的な知識と中立的な視点を活用し、迅速かつ効率的に高品質なマニュアルを作成することが可能になります。
第三者の視点が入ることで、マニュアルの適時更新が保証され、スタッフ教育を早期に進めることができ、結果的に企業の生産性と利益向上につながります。マニュアル作成を計画的に進め、必要に応じて外部リソースの活用も視野に入れましょう。
業務マニュアルの活用事例
業務マニュアルが活用されているケースとして、次の2つの例を紹介します。
- チェーン展開している飲食店
- ホームページ更新作業のマニュアル(WordPress操作)
それぞれの活用例を詳しく見ていきましょう。
チェーン展開している飲食店
チェーン展開している飲食店には必ず洗練されたマニュアルが存在します。マニュアルが徹底されていることにより、どの店舗でも同じ品質の料理を提供し、顧客の期待に一貫して応えることが可能です。調理方法だけでなく、接客や衛生管理に関する詳細もマニュアル化されているため、新しく入ったスタッフでも短期間で業務を習得し、効率的に働くことができます。
マニュアルの存在は、トレーニングの時間とコストを削減し、店舗間での業務の標準化を実現し、全体として均質かつ高品質なサービス提供を可能にします。人材の入れ替わりが激しい業界であっても、サービスの質を落とすことなく、高い運営効率を維持できるでしょう。
ホームページ更新作業のマニュアル(WordPress操作)
WordPressでホームページを更新する際、初心者でも簡単に操作できるとはいえ、詳細な操作手順を記憶するのは難しく、時間が経つと忘れがちです。操作マニュアルがあれば、新しい投稿の追加やブログの更新など、具体的な手順をいつでも確認でき、作業の正確性が保たれます。
Web制作会社にとっても、クライアントにマニュアルを提供することで、サイトの自立的な更新を促し、長期的な顧客満足と継続的なサービス利用につながります。WordPress操作マニュアルは、使用者にとっても制作側にとっても有益なツールとして機能し、Webサイトの活用度を向上させる効果が期待できます。
マニュアル作成で業務の標準化を
業務マニュアルは、誰でも一定水準の業務に到達できるためのツールです。しかし、限られた時間とリソースの中でマニュアルを作成するには、計画的なアプローチと工夫が必要です。
本記事では、業務マニュアル作成のメリット、作り方、コツを詳しく解説しました。業務マニュアルの実用的な運用は、ポイントをおさえてユーザー目線で作成することが重要です。
実用的なマニュアルを通して、業務の標準化を実現し、より多くの方々が働きやすい環境を整えましょう。
業務マニュアル作成の「YUTAKA WORKS」では、マニュアルを作りたいけど、手が回らない、作り方がわからない、という方もお気軽にご相談ください。
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